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調査事例の紹介

事例・違法、不当な調査に対して判例、税務運営指針、税務運営方針等をもって対峙し納税者の権利を守った事例

東京局 S税務署 特別調査官事案 【整形外科医】


<事 案>

事前通知により開業4年で初めて調査をうけた。3
回の実地調査には顧問税理士は一度も立ち会わず資格の無い事務員だけであった。初回の実地調査では納税者本人、及び経理担当者に対しほとんど質問も、帳簿等の検査を行わず4年分の帳簿を持ち帰った。その後納税者の承諾を得ることなく一方的にカード決済されたデパート・旅行代理店等の反面調査が行われ、さらに事業に関係のない妻名義のカード決済分についても反面調査が行われた。
以後の実地調査においても、収入金額についての調査質問は一切なく、特別調査官は反面調査の実施を伏せたまま、「旅行は誰と行ったか」と質問、本人は「従業員と慰安旅行」と回答したところ、「嘘を言って隠そうとした」のは仮装隠蔽に該当し、重加算税対象であるとし、青色申告の取消をチラつかせ「申述書」の提出を強要された。さらに上記を口実に経費の各科目について自己否認を強要され、自己否認分の大部分を重加対象とされた。また、何ら根拠を示さず接待交際費のうち自己否認した以外の1/2相当分と車両に係る減価償却費、駐車場代を否認。専従者給与についても妻の業務内容について一切の質問もなく、従業員の最も高い給与(25万円)を超える月額25万円は過大報酬であるとして否認してきた。その結果4年分で3,000円万円超(税額で1,800万円)の修正申告を慫慂され、応じなければ更正すると脅された。
一方、顧問税理士からは4年間一度も必要経費について適正な指導を受けたことも無く、税務調査の立会いにあったては帳簿等の持ち帰りや反面調査に抗議することもなく、専従者給与について届出は月額50万円になっているにもかかわらず他の医療機関でも25万円が平均であると主張、更に「申述書」の案文を作るなど当局サイドに立った態度に終始し、2度にわたって「早く修正申告に応じないと更正される」と圧力をかけてきた(そのうち一度は解任されてから)。
納税者は、納得がいかず税理士を解任し、新しい税理士の下で調査手法、重加・青取、専給・交際費の否認基準等について抗議と釈明を求めた。


<調査結果>
その結果特別調査官は調査手法に行きすぎあったことを認め、調査額についても自己否認した金額以外は否認する根拠が無いことを認め、納税者に謝罪した。


<この事案の問題点>

(解説1)
本件は下記<参考>の課税庁の調査手法に係る諸問題(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)に該当し、部下を指導すべき立場にある特別調査官事案であることは、おおいに問題があります。
当局の見解(新法律的知識)においては「反面調査は適正・公平な課税を実現するために必要な情報を収集することを目的として、権限がある税務職員が調査のために必要と認めた場合に、質問検査権に基づいて行うものであり、納税者本人の了解を必要とするものではない。」としています。
しかし、税務運営方針(昭和51年4月)は「反面調査は客観的に見てやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする」とその基本方針を述べ、さらに具体的事務運営指針(平成12年7月個人課税事務提要、13年7月法人課税事務提要)では「取引先等の反面調査を実施しなければ適正な課税標準を把握することができない場合」とその要件を定めています。更に、調査事務の概要(東京局平成18年7月)では、「反面調査は、調査対象者に対する調査だけでは課税標準の的確な捕捉が十分出来ない場合、又は課税標準の補充に関して疑問点や不合理点があってそれが明らかに出来ないと認められる場合に、その実態を確認するために行う裏づけ調査を言うのであるから、調査対象者の申告所得金額の真実性を疑うに足りる合理的根拠もないまま、只単に取引があるという理由のみで実施するようなことがあってはならない」と明確に記しています。従って反面調査は課税庁の裁量でいつでも出来るものではなく、明らかにやむを得ない事情がある場合に限って出来るのです。「やむを得ない場合」とは、明確な基準はありませんが、納税者本人が調査を忌避している場合や帳簿書類等が無いか、提示を拒否している場合がこれに当たると考えられます。反面調査を行う場合、「やむを得ない事情」を納税者に説明し了解を得ることは当然であり、本件は「税務運営方針」を著しく逸脱した不当で違法な調査といわざるを得ません。

(解説2)
重加算税の賦課基準(隠蔽又は仮装に該当する場合)、一隠蔽又は仮装の意義については平成12年7月3日国税庁長官の事務運営指針「申告所得税の重加算税の取り扱いについて」において、二重帳簿の作成、帳簿書類の隠匿・虚偽記載、架空名義取引等8項目の基準が明記されており、本件は単に会計事務所が決算時に事業主貸への失念であり重加の対象にはなりません。調査官はこのことを承知の上で重加を恣意的に賦課するがために、納税者が自ら不正をしたことを認める「申述書」の提出を強要したもので、極めて悪質な調査手法です。

(解説3)
「青色申告の承認の取消しについて」(事務運営指針 平成12年7月3日)にその基準が明記されており、隠蔽・仮装等の場合の青取基準は、「隠蔽又は仮装の事実に基づく所得金額が、更正等に係る所得金額の50%に相当する金額を超えるとき(当該不正事実に係る所得金額が500万円に満たないときは除く)」明記されています。
また、取消し見合せ要件として、「その年分前7年以内の各年分につき、次のいずれをも満たし、かつ、今後適正な申告が期待できると認められるときは、青色申告の承認の取消しを見合わせる。@青色申告の承認の取消しをうけていないこと、A既往の調査による不正事実に係る所得金額又は不正事実に係る純損失の金額が500万円に満たないこと」と明記されています。従って本件は、青取の要件に該当しないのです。調査官は解説2と同様に上記の基準を承知の上で納税者や税理士の無知に付け込んで修正申告の慫慂をしているのです。

(解説4)
青色専従者給与が相当であるかどうかの判定は、納税者の個々の実態に即し、次の状況を総合勘案して行うこととされています(所法57@、所令164@)。@従事した期間、労務の性質、提供の程度、A使用人の給与、同業・同規模類似の給与、B事業の種類、規模及び収益状況。本件は専従者の労務内容は全く調査を行わず個々の実態を無視し、Aの使用人給与のみを基準にしたもので、到底総合勘案した判定ではないことは明らかです。

(解説5)
必要経費の範囲について、所法37@は、@総収入金額に係る原価、A収入を得るために直接要した費用、B販売費及び一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用となっています。本件の場合、納税者が必要経費の諸科目について自己否認した事項以外は個々の検査は一切行われていません。否認理由は自己否認したものが有るので他にも家事関連費が含まれているだろうという推測により、二分の一相当額を否認しています。本来税務調査は、経費を否認する以上個々の取引について経費に算入できない理由を説明すべきが筋です。


<参考> 課税庁の調査手法に係る諸問題
(1) 税理士法改正に伴う税理士への事前通知の不徹底
(2) 臨場調査日数や調査場所の強要
(3) 恣意的な基準による無予告現況確認調査
(4) 調査選定理由が不明確な調査の増加
(5) 質問検査が不十分なままでの反面調査や記帳簿書等の持ち帰り
(6) 納税者の無知に付け込んだ調査展開と課税処分
(7) 不明確な基準による役員報酬・専従者給与や接待交際費等の否認の強要
(8) 青色申告取消しをチラつかせた修正申告の強要
(9) おとり調査的な手法や「申述書」等の提出強要による重加算税の賦課
(10) 税務運営方針等を無視した違法性のある反面調査の強行
(11) 推計課税の要件を満たしていない推計課税
(12) 調査結果についての説明責任を果たしていない修正申告の慫慂
(13) 指導にすべき小額事案の修正申告の慫慂
(14) 消費税仕入税額控除の否認の増加

 

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